ティツィアーノ


ティツィアーノとその時代

 ティツィアーノの師ジョヴァンニ・ベッリーニは、彫刻的な人物表現と明るい色彩による光の表現を極め、ヴェネツィアの画家たちの規範となった。ベッリーニの様式を学んだティツィアーノは、人物の身振りや運動性と独特の色彩、そして筆跡を残す描法を新たに取り入れ、ベッリーニ以降のヴェネツィア派を牽引した。16世紀半ば以降は、ティントレット、ヴェロネーゼらが主役となりティツィアーノから学んだ表現をそれぞれ個性的な方法で変容させ、ダイナミックな絵画を生み出した。  16世紀のイタリアにおいて、ティツィアーノはミケランジェロとともにもっとも偉大な芸術家として称賛された。しかし、彼らに対する同時代の評価は「色彩に優れたティツィアーノ」と「素描に優れたミケランジェロ」という対照的なものであり、彼ら自身も互いにライバル心を抱いていた。ヴァザーリの『美術家列伝』(1568年)によると、ローマでティツィアーノを訪ねたミケランジェロは、描かれたばかりの《ダナエ》を見て称賛したものの、後に素描がなっていないことを批判したとされ、複雑な心境がうかがえる。
 こうしたミケランジェロ=フィレンツェ派を称揚する気運に対抗し、ヴェネツィアでも美術批評家たちが、それぞれの著書において、ティツィアーノを16世紀イタリアの最高の芸術家として褒め称えた。芸術家たちの優れた技量とともに、芸術家をとりまく人々による知的な援護によって、ヴェネツィア派美術の黄金時代が築かれていった。



イタリアルネサンス ヴェネツィア派VSフィレンツェ派

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